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新型ロータリー除雪車も登場した国交省 高山国道事務所の除雪出発式

中部地方整備局史上最大規模の除雪出発式

2015年11月6日 実施

冬を間近に控えて行なわれた高山国道事務所管内 除雪出発式。50台もの除雪車が一堂に集結した

 11月6日、岐阜県飛騨市古川町、国道41号にある袈裟丸パーキングで、国土交通省 中部地方整備局 高山国道事務所管内の除雪出発式が行なわれた。会場には50台ものさまざまなタイプの除雪車が集結。さらに今季より投入される新型ロータリー除雪車の除幕式が行なわれ、“中部地方整備局史上最大規模”を謳う大規模な除雪出発式となった。

 式典では冒頭に挨拶を述べた高山国道事務所長の和賀正光氏をはじめ、すべての登壇者が、日本海に面する富山県富山市から太平洋側の愛知県名古屋市へ縦貫し、広域物流や地域生活のおいて重要な国道41号や中部縦貫自動車道の豪雪期における道路交通の確保の大切さに触れた。

 また高山警察署長の大坪道明氏は、難所と言われる宮峠(岐阜県高山市)、数河峠(岐阜県飛騨市)での倒木や、停電によって物流が止まり各家庭が孤立するような事態もあった2014年の大雪に触れ、極寒の昼夜を徹して除雪作業にあたり高山の生活と物流が維持できたことに感謝の辞を述べた。

国土交通省 中部地方整備局 高山国道事務所管内の除雪出発式は、秋晴れのなか国道41号沿いの袈裟丸パーキングで行なわれた
高山国道事務所長 和賀正光氏
飛騨市長 井上久則氏
高山警察署長 大坪道明氏
ボランティア・サポート・プログラム実施団体への小型除雪機の引渡式

 式典中ボランティア・サポート・プログラム実施団体への小型除雪機の引渡式が行なわれ、飛騨市古川町袈裟丸区長 野村正人氏、飛騨市神岡町寺林区長 小野和美氏へ小型除雪機のマスコットキーが手渡された。このプログラムは高山国道事務所が小型除雪機を貸与し、大型の除雪機ではカバーできない部分の除雪を地域のボランティアによって補完するアイディアだ。

新型ロータリー除雪車披露式(写真右が通常型、左が高速型)

 今季より投入される2台のロータリー除雪車が披露された。1台は通常型のもので数河除雪センターに配置され主に数河峠の除雪を担当する。もう1台は今回初投入される高速型で通常型の最高速度50km/hに対し高速型は70km/hであり、清見除雪センターに配置され、主に中部縦貫自動車道を担当する。

 除雪能力は通常型、高速型ともに1時間あたり2660トン、除雪の幅は2.2m、除雪の高さは1.7m、最大投雪距離45mと同じだが速度の向上による回送時間の短縮は早期除雪に大変有効とのことだ。また、速度アップはほかの地域への広域支援においても有効だという。通常型のロータリー除雪車は前輪にサスペンションを持たないが今回投入された高速型にはサスペンションを備え高速走行に対応している。

 なお、高山国道事務所はこれらの除雪車に愛着を持ってもらおうと、同事務所のWebサイトで現在愛称を募集している(募集期間は11月23日頃までを予定しているとのことだ)。

 新型ロータリー除雪車の披露式の後、除雪作業の現場を担当する除雪業車の安全宣言が行なわれ、除雪機の安全点検を行なったあと、会場に集まった除雪車は配置されるセンターに向かうべく出発した。

出発前に除雪機の安全点検が行なわれた
ロータリー除雪車(高速型)
ロータリー除雪車(通常型)
雪を遠くへ飛ばすブロアや、飛ばす方向を決めるシュートを操作するジョイスティックは運転手用と助手席用の2セットが装着されている
除雪グレーダは主に圧雪を除去。削った雪面がつるつるにならないよう筋をつける「粗面形成装置」なども備える
刃物のように鋭い部分を路面に強く押し付け圧雪を取り除く
車体先端のタイヤは前輪が2輪あるスクーターのようにリーニングするため、丸いトレッド面を持つ特殊なスタッドレスタイヤを履く
以前は何本も伸びたレバーにより除雪装置の操作を行なっていたが、現在では電子制御化されている
神岡管内では凍結防止剤散布後の即効性と持続性のため、薬剤を水で湿らせて散布する湿潤式の「凍結防止剤散布車」を使用している
除雪トラックは主に新雪の除雪を行なうが、車体下に設置されたトラックグレーダーにより圧雪処理も担当する
「小型除雪車」の仕組みは大型のロータリー除雪車と同じだが、除雪幅は1mと狭く、大型機械の入れない狭い場所や歩道の除雪に使用される
積雪地で使用される車だけあってタイヤはスタッドレスだが、作業時にはすべてチェーンを装着するとのことだ。また車種によってはガラス全面に熱線が入っていた。また撮影車には除雪情報システム用のノートパソコンが装着されていたが現在ではタブレットを使用しているとのことだ

 現在、高山国道事務所での除雪情報共有システムは、気象協会からの気温状況、路面状況、降雪状況の情報はもちろん、除雪車に積まれた端末の位置送信アプリによる除雪車の車両位置情報、除雪の進捗状況を取り入れ、除雪作業車への支援や、道路管理者が除雪に関する沿線住民からの問い合わせに的確に対応するための情報を管理している。

 国土交通省 中部地方整備局 高山国道事務所が管轄する日本海~太平洋を縦貫するこのエリアの豪雪地帯は除雪の苦労も大きい一方で、ひとたび交通が途絶えるとその影響も計り知れない。

 今回の出発式で高山警察署長 大坪道明氏は「昨年は思わぬ大雪が一気に降り国道41号宮峠、数河峠や思わぬところでの倒木、停電によって物流が止まり、各家庭が孤立するような事態もありました。そんななか、極寒の夜を徹して除雪作業に当たっていただきました。その結果、早期に開通し、この高山の生活と物流が維持できたと思っています。あらためて感謝します。冬の道を当たり前に通ることができるのも皆様の日頃の活動と陰ながらのご活躍の賜物。今年もよろしくお願いします。皆様の除雪が安全に行なわれること、地域の安全安心が保たれること、そして雪による悲惨な交通事故が一軒でも少なくなること祈念しています」と述べた。

 会場から見える山々の紅葉が美しい季節であったが、2014年は12月の初旬にはすでに凍結防止剤の散布が始まっていたという。今回集まった50台もの除雪車が活躍する季節はもう目の前だ。

(高橋 学)