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中部国際空港、ボーイング 787の部品輸送支援施設「ドリームリフター・オペレーションズ・センター 2」を新設

2015年10月30日 開催

ドリームリフター・オペレーションズ・センター2の新設を発表

 中部国際空港(セントレア)は10月30日、「ドリームリフター・オペレーションズ・センター(DOC)2」を新設すると発表。同日、起工式及び記者会見を実施した。

 ドリームリフター・オペレーションズ・センターは、中部地域で製造したボーイング 787型機のパーツを専用輸送機「ドリームリフター」に搭載するための支援施設。ドリームリフターにパーツを搭載する際に使用するハンドリング機材の格納や、三菱重工業や川崎重工業、富士重工業の各工場から海上輸送されてきたボーイング 787のパーツを一時保管する役割を担う。2014年からDOC 1が稼働しているが、ボーイング 787型機の月次生産数アップに伴い、機能拡充のため新施設を建設することとなった。

建設地は左に見えるDOC 1の右側の空きスペース
手前が建設予定地
DOC 1。こちらは搬出側で6つのベイがある
ボーイング 747型機を改造したドリームリフター。奥に見えるのが積み込みを待つ787型機の主翼
JALの787型機とドリームリフター。ドリームリフターは4機体制で現在17回/月程度セントレアに飛来しているが、今後25回/月程度まで増える予定だという
施設概要

施設名称:ドリームリフター・オペレーションズ・センター2
整備主体:中部国際空港(同社とボーイングによる賃貸借契約を締結)
建設予定地:DOC 1隣接地
建築面積:約2000m2
スケジュール:2015年11月着工、2016年夏完成予定

 記者会見に先立って行なわれた起工式には、施設の発注者となる中部国際空港 代表取締役社長 友添雅直氏をはじめ、ボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏らが出席。神事が執り行なわれた。

建設予定地で神事が執り行なわれた
中部国際空港 代表取締役社長 友添雅直氏

 神事の最後に行なわれた直会では、中部国際空港 友添氏が登壇。「皆様ご承知のとおり、ドリームリフターによる輸送プロジェクトは世界的にも大変ユニークな取り組みでございまして、ボーイングと日本の重工各社が共同で構築したこの生産システムのなかで、セントレアは中継基地として活用されています。この度の“ドリームリフター・オペレーションズ・センター2”は、787の増産体制の構築にあたりまして、ボーイングからご相談があり、弊社がこれに応える形で整備を進め、来年(2016年)夏の完成を目指しております。ボーイング 787の増産が進むなか、グローバルサプライチェーンの中で中部地域が果たす役割はますます大きくなり、その一端を担うものとして誇らしく思います。当施設が数十年先においても安定的に稼働し、ボーイング並びに地域の航空産業に貢献していくことを期待しております」と挨拶した。

ボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏

 次いでボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏が「この度のドリームリフター・オペレーションズセンター拡張工事は、この種の施設としましてはボーイング社が米国外で手がけた初めてのものになります。一昨年(2013年)の“ドリームリフター・オペレーションズ・センター1”の竣工に引き続き、第2段階の建設を始めることになりました。これは太平洋を跨ぎ今後50年を見通す航空機製造のコラボレーションにおけるサクセスストリーの新たな1章になります」と前置き。

「ドリームリフター・オペレーションズ・センター2は中部地域で製作された787型機の組み立て部品を、ボーイング社の最終アッセンブリーラインへ適時に送ることを確かなものとし、世界中の我々の顧客へ最新鋭の航空機である787ドリームライナーを、類まれな製造水準をもってお届けすることを可能にします。この地域の我々のパートナ企業は、787の航空機構造部品の35%を最高水準の品質をもって製造しています。製造されるこれらの部品は決して単純なパーツではなく、三菱重工による主翼、川崎重工による前部胴体、そして富士重工によるセンターウイングボックスのような787の重要なパーツです。すべてのパートナーの方々による787の夢へのコミットメントに心からの感謝をいたしたいと思います。特に中部国際空港様におきましては、この素晴らしい施設の拡張をとおし、日本の航空産業の中心にその地位を確立され、787の夢へのコミットメントを示されていることに心からの感謝を申し上げたいと思います」と、DOC建設の経緯と抱負を語った。

愛知県副知事 石原君雄氏

 同じく来賓として登壇した愛知県副知事 石原君雄氏は「愛知県を中心としたこの中部地域は全国の航空機部品生産の5割を超える航空宇宙産業の一大集積地であり、国の国際戦略総合特区の指定を受けております。なかでも本県では技術立国日本の成長発展を牽引することを目指し、先端技術集約型産業である航空宇宙産業の育成、振興に取り組んでいるところであります。787ドリームライナーは当地区の重工メーカーおよびサプライヤー企業が機体構造部品の35%を担うなど、“メイドウイズジャパン”として、かつてないほどの関わりをもって製造されております。このドリームリフター・オペレーションズ・センター2が竣工されることによりまして、量産体制が強化され一層効率的になりますので、一日も早い完成を心待ちにするところであります。加えてボーイング社は去る7月7日、中部国際空港へ787型機の飛行試験1号機を寄贈されました。これはボーイング社がこの地域の企業をパートナーとして深く信頼し、さらなる期待を寄せていただいているものと思っております。愛知県としてもボーイング社とこの地域の未来が明るいものとなりますよう、航空宇宙産業のさらなる高度化と集積拡大を進めてまいりたいと考えております」と歓迎の意を示した。

東急建設 浅野和茂氏

 最後に設計施工を担当する東急建設 浅野和茂氏が「細心の注意をもって万全の体制で臨む」と話し、無事に起工式が終了した。

 起工式後に行なわれた記者会見には中部国際空港 代表取締役社長 友添雅直氏、ボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏、そしてボーイング プロダクト・インテグレーション&ロジスティクス担当ディレクター 787型機サプライヤー・マネージメント ボーイング民間航空機部門 アンディ・ハッチソン氏が出席した。

起工式後に行なわれた記者会見
DOC 2外観イメージイラスト
中部国際空港 代表取締役社長 友添雅直氏

 冒頭、中部国際空港 代表取締役社長 友添雅直氏は「このたび、ボーイングと中部国際空港は中部地域で生産されるボーイング 787型機の部品輸送を円滑に実施するために、セントレアに設置いたしましたドリーリフター・オペレーションズ・センターを拡充、増設することに合意いたしまして契約締結に至りました」と、概略を説明。

 2007年にドリームリフターが初飛来して以来、「着実に輸送実績を積み上げ」、「ドリームリフターに搭載するための機材保管庫、および空港内で出荷製品をストックする機能として、ドリームリフター・オペレーションズ・センターを設置」して2013年1月から本格運用を開始。さらなる増産計画に対応するためにDOC 2の建設及びDOC 1の改修工事に着手したと説明した。

 施設に関しては「当社が建設いたしまして、ボーイングと賃貸借契約を締結いたしまして、ボーイングが運営するということでございます。建設予定地は空港島の南側、既存のDOC 1の隣接地で建設面積は2000m2、11月中には着工し、来年夏の完成を目指しています」と話した。

ボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏

 ボーイングジャパン 社長 兼 ボーイングインターナショナル バイス・プレジデント ジョージ・マフェオ氏は、セントレアについてドリームリフターの日本における故郷であると同時に、ドリームリフターが同地のシンボル的存在となってることに「非常にワクワク」していると前置き。787型機は機体の構造部分のうち35%が中部地方で作られており、2010年に月次2機、2014年には月次10機のペースで工場出荷、このペースでワイドボディ機を製造するのは「ボーイングの歴史始まって以来のこと」と解説。しかし、2016年には月次12機、2020年には月次14機の製造を目指しており、「野心的な生産レートを達成するためにはサプライチェーンの効率を上げ、重工パートナー企業が製造した部品を滞りなく、オンタイムにエベレットとチャールストンの最終組み立てラインに運ぶ必要があり、設備拡充のためのDOC 2建設をセントレアに打診、受諾していただいた」と経緯を話した。

ボーイング プロダクト・インテグレーション&ロジスティクス担当ディレクター 787型機サプライヤー・マネージメント ボーイング民間航空機部門 アンディ・ハッチソン氏

 最後にボーイング プロダクト・インテグレーション&ロジスティクス担当ディレクター 787型機サプライヤー・マネージメント ボーイング民間航空機部門 アンディ・ハッチソン氏が施設概要を説明した。DOC 1で素晴らしい成功を収めているものの、「DOC 1のオペレーションが開始されたときから、生産レートを月間12機、月間14機を念頭においておりました。そうするとDOC 1だけでは手狭になることが分かっていました。DOC 2はDOC 1に隣接しておりまして、オペレーションの内容も類似しております」と当初から増設計画が必要になる見込みだったと明かした。

 また、今回の計画ではDOC 1に「ステージング・ラック」を2機増やして5機に、DOC 2に1機で計6機とするほか、DOC 2には「ラージ・カーゴ・ローダー」を2機、「モバイル・テール・サポート」を屋内保管とすることが説明された。

建設予定地
外観イメージ
完成後は搬出側のベイがDOC 1とDOC 2合わせて10基になる
ラージ・カーゴ・ローダーに積まれた主翼
改修後のDOC 1は搬入側のベイはこれまでの3基から5基になり搬入性が向上
DOC 2搬出側外観イメージ
DOC 2にはステージング・ラックのほかラージ・カーゴ・ローダーなどを収納
ラージ・カーゴ・ローダーによる主翼の積み込み
荷物を積み込んだ後はモバイル・テール・サポートにより尾翼部分が閉じられる

(安田 剛)