ニュース

大分県、宇宙港を擁する「オンセン県」に進化。宇宙人を自己申告すると旅館・ホテルで割引など

2021年12月13日 実施

左から、大分県 広報広聴課 課長 渡辺修武氏、宇宙人、宇宙飛行士 山崎直子さん

 大分県は12月13日、新たなシティプロモーションとして「宇宙ノオンセン県オオイタ」を発表した。県内にある大分空港が早ければ2022年に「宇宙港」になることを受けた取り組みだ。

 2020年4月に、アメリカの宇宙開発企業ヴァージン・オービットと大分県が提携したことで、大分空港が宇宙港となることが決定した。「宇宙ノオンセン県オオイタ」とは、大分空港が宇宙港になるタイミングで、大分県が従来の「おんせん県」から、宇宙規模で愛される「オンセン県」に進化するという宣言で、12月13日~2022年2月28日にPR動画、公式Webサイト公開、SNSなどで情報発信を行ない、大分県内の温浴・宿泊施設でキャンペーンを行なう。

 PR動画は、大分県の観光地に宇宙人が登場するユニークな内容になっており、「宇宙人を見た」として全7タイプを公開している。

「温泉好きな宇宙人!?」篇
「おんせん県のミステリーサークル」篇

 このほか公式Webサイトでは、キャンペーン対象となる大分県内の温浴と宿泊施設の一覧や、キャンペーン内容を紹介している。 また「宇宙人Uのインスタグラム」アカウント(@alien_u_oita)では、宇宙人が大分県内を周遊しながら、気に入った観光スポットを配信していく。

 大分県内の温浴と宿泊施設でのキャンペーンは、12月16日~2022年2月28日の期間で、県内37の温泉旅館とホテルで「宇宙人割」を実施。宇宙人であることを自己申告すると、プレゼントやさまざまな特典、宿泊料金が割引となる施設も。

宇宙人と自己申告すると適用される「宇宙人割」
宇宙人用のピクトグラム

 13日に行なった発表会では、大分県知事の広瀬勝貞氏からビデオメッセージが寄せられ、「最速で2022年の後半には、大分空港で初の人工衛星打ち上げを目指し、10年間で20回の打ち上げを予定している。2023年には、大分市の中心部と空港を結ぶホバークラフトの整備に加え、宇宙産業の創出や温泉地との相乗効果による観光客の増加など、大きな経済波及効果が見込まれている」と述べ、「これを契機に、おんせん県も宇宙規模に拡大し『宇宙ノオンセン県オオイタ』として取り組んでいく」と意気込みを語った。

宇宙規模で愛される「オンセン県オオイタ」を目指すとした広瀬勝貞知事

 また、ゲストとして宇宙飛行士の山崎直子さんが登壇。大分県について聞かれると、「大分県は食文化が豊かなので、いつか大分の名産品が宇宙食で食べれるようになれば」とコメント。

 宇宙と温泉については、「国際宇宙ステーションではお風呂やシャワーはなく、濡れタオルで身体を拭くだけでしたが、今では水のリサイクルも進んでいるので技術の進歩に期待したい。月面なら重力が地球の6分の1なので、温泉に入れるかもしれない」とし、宇宙港については「アジアが宇宙輸送のハブとなり、日本でも相乗効果で宇宙開発が盛り上がるのを期待したい」と述べた。

「日本から人が宇宙へ行き来する宇宙港に期待」と語る宇宙飛行士の山崎直子さん

 大分県では名産品を使った宇宙食の開発が行なわれており、大分空港周辺の名産品や、宇宙食の取り組みを始めた企業の食品を使用したランチメニューも紹介した。

大分産の食材を使ったランチメニュー。左上から「別府湾のちりめん 里芋唐揚げ 銀餡」「国東 姫たこ 宇佐 みどり豆」「臼杵煎餅 バニラアイス」左下から「郷土飯 国東 たこ飯」「国東 銀たち 乾しいたけ 南蛮漬け」「日田 ほるこん 千瓢 旨煮」

宇宙港に対する期待と経済効果

 宇宙港とは宇宙船の離着陸場の総称で、大分空港はアジアでは初の「水平型宇宙港」になる。ヴァージン・オービットは、人工衛星を搭載したロケットを垂直方向に発射する従来の方式から、大型旅客機ボーイング 747型機の主翼にロケットを吊り下げ、空港から離陸して空中でロケットを打ち上げる「水平型打ち上げ方式」を採用しており、この方式ではロケット発射場のような大がかりな施設が必要なく、周囲の環境に与える影響も低いとされている。大分空港が選ばれた背景には、空港の滑走路長が3000mあり、ボーイング 747型機の離着陸が可能な点も大きいという。

アジア初の水平型宇宙港となった大分空港
空中でロケットを発射する水平打ち上げ方式を採用しているヴァージン・オービット

 大分空港の宇宙港としての運用に際し、大分県の試算では、空港運用を始め、ロケットや人工衛星の部品と燃料のサプライチェーンの構築や、新ビジネスの創出、観光誘客など、2022年以降の5年間で、約102億円の経済波及効果を見込んでいる。

 内訳として、打ち上げに係る燃料調達など、射場運営効果に31億円、定例的に打ち上げられるようになった際に建設する、建設投資効果が15億円、観光客、観光プログラムの利用など、観光消費効果に56億円となっている。

 2020年9月には、内閣府と経済産業省が推進する「宇宙ビジネス創出推進自治体」に大分県が選定され、2021年11月には、大分県知事をはじめ、11の都道府県から岸田総理大臣に宇宙産業の育成、振興に関する要望書を提出するなど、大分県での宇宙産業拡大に期待が高まっており、今後地方での宇宙ビジネスが注目されている。