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阪神高速、定例会見。西船場JCTが2020年1月末、大和川線全線は年度内開通。湾岸線通行止めの注意喚起も

2019年10月3日 実施

阪神高速道路株式会社 代表取締役社長 幸和範氏

 阪神高速道路は10月3日、定例の社長記者会見を開き、「2019年度 阪神高速グループの取り組み状況」について発表した。会見の主なトピックスは以下のとおり。

2019年度 阪神高速グループの取り組み状況

1. 阪神高速道路ネットワーク整備の状況
2. 4号湾岸線(南港北~大浜)リニューアル工事の状況
3. レッカー車導入の効果
4. 阪神・淡路大震災での復旧経験の継承に向けた取り組み

 会見の冒頭、阪神高速道路 代表取締役社長の幸和範氏は、令和最初の年に地元大阪でG20が開催されたことや、現在開催中のラグビー・ワールドカップでも試合が行なわれていること、また近年は異常気象が常態化していることなどに触れ、「高速道路を運営する者として、構造物の安全を確保することは当然のことであり、ご利用いただくお客さまの安全を第一に事業に取り組んでいきたい」と述べた。

 また、阪神高速道路の交通量や料金収入の変化状況について、本年はG20開催に際して通行制限なども実施したが、交通量はほぼ前年なみであることも明らかにした。G20開催期間のみで見ると、情報周知の広報努力などにより、普通車の交通量は前年比約60%減となったが、大型車に関してはサミット開催中は約10%減、その前後はほぼ100%で推移するなど、物流への影響はほとんどなく効率的な交通量の抑制が行なえたという。

阪神高速道路ネットワーク整備の状況

 阪神高速道路のネットワーク整備について、現在建設中(合併施工を含む)または今後工事が始まる区間が発表された。本年度に開通する区間は「西船場JCT(ジャンクション)」「大和川線7.7km」で、今後新たに着工する区間は「淀川左岸線(2期)4.4km・淀川左岸線延伸部7.6km」「大阪湾岸道路西伸部14.5km」である。

図中の赤線・青線部分が工事中もしくは今後工事がスタートする区間

西船場JCT(2020年1月末ごろ開通予定)

 1号環状線と16号大阪港線が立体交差する信濃橋において、16号東行きから1号北行きへとつながる「信濃橋渡り線」を整備するもの。

 ここは半世紀近く前から構想はあったものの、元銀行の頑丈な建築があったために建設ができなかったという。この渡り線が開通することで、現在の16号東行きから1号北行きへの迂回路約5.5kmが必要なくなり、所要時間にして5分程度の短縮が可能になる。阪神高速では「信濃橋渡り線」の開通により、1日約1万1500台程度の利用が見込まれ、都心部の渋滞原因の緩和にもつながるとしている。

 現時点で橋脚、橋梁部分は完成しており、舗装や電気工事など仕上げの段階に入っている。2020年1月末ごろの開通予定で、現在閉鎖中の「信濃橋入口」も同時に共用開始となる。

西船場JCTについて。図中の赤い道路が新規開通区間

大和川線(2019年度内に全線開業)

 4号湾岸線三宝JCTから14号松原線松原JCTまでの7.7kmを整備し、大阪都心部の南側で東西がつながる。

 これにより、神戸方面と奈良方面を結ぶルートは現在の大阪中心部を通る(3号神戸線+14号松原線)ものと、堺市・松原市を通る(5号・4号湾岸線+大和川線)ものとに2分され、都心部の渋滞緩和および事故や災害時の代替道路の役割を果たす。

 大和川線の全線が地下(トンネル)構造で、トンネル本体については全通しており、現在は舗装工事、施設工事(防災設備・料金所など)など最後の仕上げにかかっている。なお、トンネルはシールド工法を採用し、道路の下の空間を利用して歩行避難用通路を確保、道路から避難通路へは滑り台を使用して降りる形式を採用。これは首都高横浜北線に採用されているものと同様で、関西エリアでは初めてとなる。阪神高速では、開業に向けて今後は避難方法を周知するための取り組みも行なっていくとのこと。

大和川線について。西日本で初めて滑り台を使った避難経路を採用

淀川左岸線(2期)・延伸部

 淀川左岸線は、大阪都心部の北側を東西に結ぶ路線で、第二京阪道路と近畿道が交差する門真JCTから、3号神戸線の海老江JCTまでの全長13.1kmの区間。全線が地下(トンネル)構造となっており、このうち東側の淀川左岸線延伸部8.7kmについては、大部分が70m以深の大深度地下を走る。

 現状、大阪都心部を抜けて東西を行き来する通過交通量は、環状線全体の交通量の約31%(約10万台/日)とカウントされており、淀川左岸線の完成によりこれらが大幅に分散され、都心部の渋滞が緩和することが期待される。

 地質調査などは完了しており、大阪府よりトンネル本体工事を受託。工事はまもなく開始される見通しで、大阪府と連携しながら進めていくという。

大阪湾岸道路西伸部

 大阪湾岸道路は、神戸淡路鳴門自動車道の垂水JCTから関西国際空港のりんくうJCTを結ぶ延長約80kmの道路。

 現在は4号・5号湾岸線として六甲アイランド北IC~りんくうJCTまでを供用しているが、垂水JCT~六甲アイランド北ICは未着工。このうち次に着工を予定している区間は、六甲アイランド北ICから3号神戸線・31号神戸山手線の湊川JCTまでの約14.5kmとなる。これにより、姫路・明石など神戸以西のエリアと関空、神戸港、大阪港といった物流拠点との移動時間が短縮、あわせて3号神戸線の渋滞解消にもつながることが期待される。

 なお、この区間は陸地部分を高架橋で、海上部分を長大橋で建設する計画で、長大橋の構造は今後技術検討委員会を通じて意見を集約し検討していく。2019年内には橋梁構造を決定していきたいという。

 以上の会見を通じて幸氏は、「これらの工事により道路交通の状況は大きく改善するものの、まだまだ多くの“ミッシングリンク”が残っています。ここ関西圏は、首都圏、中部圏より少し遅れて整備が進んでいるのが現状で、都市高速ネットワーク整備を着実に進めていく必要があります。最近、少しだけ元気が出てきた関西を(道路事業で)支えて、もっと元気な関西づくりに貢献していきたいと思います」と述べた。

阪神高速のパンフレットより。ミッシングリンクの解消に向けて
本年度に開業する「西船場JCT」「大和川線」について
今後工事が始まる「淀川左岸線」「大阪湾岸道路」について

4号湾岸線(南港北~大浜)リニューアル工事の現況

 4号湾岸線の南港北~大浜間は開通から37年が経過していることに加え、特に大型車の通行が多いことから、その繰り返し荷重により鋼床版に疲労亀裂が入るなどの損傷が多く発生しているという。これは振動によりアスファルト表面に細かなクラックが入り、そこに雨水が浸透して起こるものとのこと。

 そこで阪神高速では大規模修繕を実施、構造物の長寿命化(リニューアル)を目指している。その一つが、SFRC(鋼繊維補強コンクリート)による舗装。従来のアスファルトを強度の高いSFRCに置き換えることで、舗装表面の亀裂の発生を防ぎ、鋼床版の長寿命化を図っている。

 このリニューアル工事は11月20日から30日に実施し、その間は終日通行止めとなる。また、これに関連して11月6日から20日には車線規制も行なう。阪神高速では、う回路となる15号堺線、国道26号、大阪臨港線などに混雑が予想されることから、可能な限り自動車の利用を控えるか、利用時間帯の変更を検討してほしいという。

4号湾岸線南港北~大浜は2019年11月20日~30日まで通行止めとなる
リニューアル工事の工法のほか、自動車利用の注意を呼びかけている
これまでに用いられてきたリニューアル工事の工法

レッカー車導入の効果

 阪神高速では、2019年4月より、大阪地区・兵庫地区の交通管理隊にレッカー車と専従隊員を配置し、機動支援隊を編成した。事故や故障の現場にいち早く交通の妨げとなる車両を移動させるもので、民間のロードサービス会社と併用することで効率的な運用を実施しているという。

 これにより、交通渋滞の早期解消が実現するほか、大規模災害時には放置車両など移動し道路を啓開することで、救命活動に従事する緊急車両の通行も確保することが期待される。

交通管理隊には新たにレッカー車が配備された

阪神・淡路大震災での復旧経験の継承に向けた取り組み

 阪神・淡路大震災の発生から、2020年1月で25年を迎える。当時、3号神戸線の橋脚が折れ高速道路が横倒しになった映像は人々に大きな衝撃を与えた。また、阪神高速の損傷により死傷者も出ている。幸氏は、「現在の阪神高速の社員のうち、約6割が震災未経験(あるいは記憶が薄い)世代であり、未曽有の大災害を風化させることなく次世代に引き継ぐことが重要だと考えている」と述べた。

 阪神高速では、震災資料保管庫(神戸市東灘区深江浜町11-1)を設けており、実際に被災した構造物を収蔵・展示しているが、11月17日に「土木の日」協賛行事として見学イベントを開催する(申込受付中)。

 また、震災発生直近の1月中旬の土・日に特別開館を実施する。関係者による被災構造物の説明、復旧に携わった当時の職員による体験講演などを開催予定。

 なお、当施設は毎月第1・第3の水・日に見学が可能(要事前予約)。

阪神・淡路大震災での復旧経験の継承に向けた取り組み
震災資料保管庫のパンフレット