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三菱航空機、MRJブランド名変更などは「パリ航空ショーで説明」。ベラミー氏「三菱の名前はなくさない」

MRJ 3号機はパリ航空ショーで展示

2019年6月7日 発表

会見する三菱航空機株式会社 最高開発責任者 アレックス・ベラミー氏

 三菱航空機は6月7日、名古屋で定例会見「Quarterly Update(四半期アップデート)」を実施、同社が開発を進める国産ジェット旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」について現状を説明した。

 会の冒頭では代表取締役社長の水谷久和氏が「ここ最近、当社に関する報道が相次いでいるが、具体的な発表はパリ航空ショーでお話ししたい。本日はパリに向けて我々の考えを共有できれば」と述べ、詳細な説明を最高開発責任者のアレックス・ベラミー氏に譲った。

三菱航空機株式会社 代表取締役社長 水谷久和氏

 ベラミー氏は、100席未満のリージョナルジェット機の市場について、「今後20年間で5137機が納入される必要がある」と予測を紹介。型式証明の取得に向けて同社が開発を加速している90席仕様のMRJ(MRJ90)や、目下仕様を策定中の短胴型派生機(MRJ70)はいずれもこのカテゴリーに属しており、ベラミー氏は「競合のうち、1社はこの市場を抜けると考えており、もう1社はもっと座席数の多い市場を狙っている。そのため、我々はこの(100席未満の)市場をポジティブに見ている」と表現した。前者は、三菱航空機の親会社である三菱重工業がリージョナルジェット機(CRJシリーズ)事業の買収交渉を進めているボンバルディアのことであり、後者はエンブラエルを指している。

「現在飛んでいる飛行機はどれも古くなっており、その代替機が2020年から2038年にかけて5000機以上必要になる。機体によって引退までの期間は異なり、16年、18年、20年と違いはあるものの、毎年200機程度の入れ替えが見込まれる」として、代替需要が今後20年間で強く安定して推移するという予測をグラフで提示、「それを提供できるメーカーは多くない。三菱航空機にとってよい機会になる」と説明した。また、機体(MRJ)を納入したあともアフターサービスが必要であり、売り上げの20~30%はアフターサービスによって得られるとの考えを示した。

今後20年間のリージョナルジェット機市場の予測

 しかし、まずは現在開発している90席仕様のMRJ90で型式証明を取得する必要があると改めて強調し、「そのあとの製品(派生機)もMRJ90がベースになる」と述べて、型式証明試験の進捗を説明した。

 試験機4機のうち、1号機は改善版ブレーキソフトウェアを搭載し、ニューメキシコ州ロズウェルで制動性能をテスト、すべての航空局立ち会いのもと良好な結果を得たという。2号機は型式証明試験に供するために大規模な改修を行なっている最中で、6月中には飛行試験を再開できる予定になっている。

 そしてここで、3号機を6月17日から始まる「パリ航空ショー 2019」で展示することが明かされた。前回の定例会見では会場に実機を持ち込まない可能性も示唆していたが、会場現地でMRJの姿を見ることができるようだ。ただし、どのような形の展示かは明言しておらず、また型式証明試験の最中であるため、「会場には数日しかない」そうで、戻ってからはアビオニクス(航空機向け電子機器)のテストを実施するという。

 4号機はエンジンとAPU(補助動力装置)の試験を完了、コクピットの風防の試験や自然着氷試験などを実施して、ドレイニング(排水)試験のためアップグレード中とのこと。

 改修中の2号機を除いて、1号機、3号機、4号機合わせて2019年5月に飛行時間が計139時間14分、48フライトを実施。ベラミー氏は「よく言われているのが『月間40回飛行試験ができればよい』というものだが、我々はそれ以上だ」と自信をのぞかせた。

型式証明試験の進捗

 なお、会見後の質疑応答では、一部報道にあった「スペースジェット(Space Jet)」へのブランド名変更や、ボンバルディアのリージョナルジェット機(CRJ)事業買収交渉について質問がおよんだが、水谷社長は「検討はしているが、すべてパリでお知らせする」と明言しなかった。ただし、ベラミー氏は「三菱(Mitsubishi)の名前は世界中でよく知られており、三菱というブランドを取り去るつもりはない」と述べ、新名称にも「Mitsubishi」が残る可能性を示した。