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尾道駅の新駅舎公開。自転車旅の拠点になるホステルやレンタサイクルも入居

3月10日開業。TWILIGHT EXPRESS 瑞風も停車

2019年3月8日 公開

2019年3月10日 開業

3月10日に開業を迎える尾道駅の新駅舎

 JR西日本(西日本旅客鉄道)とジェイアールサービスネット岡山、せとうちホールディングスは、3月10日に尾道駅の新駅舎を開業する。

 先代駅舎の老朽化に伴い建て替え工事を行なっていたもので、駅には商業施設も併設。10日の開業当日には開業記念式典や、駅舎やテナントのデザインを手掛けた建築家らによるトークセッションを行なう。また、開業イベントとして催し物も複数用意する。

 この開業に先立ち、3月8日には報道関係者と招待者らに対する内覧会を実施、一足先に駅舎とテナントを公開した。

3代目となる新駅舎。歴史情緒ある尾道の街にとけ込むデザインだ

 尾道は風光明媚な瀬戸内の街。船舶が行きかう港町と、山の斜面に広がる坂道や路地などが混然と一体化したたたずまいが魅力で、季節を問わず多くの観光客でにぎわう。その玄関口をしての尾道駅は1891年に開業(初代駅舎)し、1928年に駅舎を大幅に改築(2代目駅舎)、以降は時代に合わせてみどりの窓口や自動改札機、エレベータの設置など小改築を繰り返しながら、2017年5月まで約125年間にわたり使用された。3台目駅舎の建設は2017年からはじまり、約2年を経て今回の開業にいたる。なお、工事期間中の尾道駅改札などはやや東側に移されており、新駅舎開業前日にその役割を終える。

新駅舎の開業に伴い役割を終える仮設駅舎

 3月8日の新駅舎内覧会では、駅改札付近、観光案内書、コインロッカーといった新駅舎の中核部分のほか、駅舎内にオープンする4つの商業施設(ホステル、コンビニ、カフェ・ショップなどの複合店舗、食堂)を公開した。

駅舎・店舗デザイン

尾道駅は尾道水道に非常に近く、その距離はわずか100mほど

 尾道駅の新駅舎と出店店舗のデザインは、アトリエ・ワン一級建築士事務所(東京都新宿区)が監修し、「尾道のまちなみに溶け込む空間づくり」「尾道の風土を活かした空間づくり」「多様な人々が集うコミュニティの場の創出」をコンセプトにまとめた。

 外観は、初代駅舎の黒い瓦屋根と、シンボル的特徴だった深い「軒」をイメージしている。また、尾道駅には「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が停車して乗客が立ち寄り観光を行なうことから、改札エリアには「瑞風グリーン」をあしらっている。駅舎の標高は周囲の道路よりわずかに高く、また設置物などで視界を遮らないように工夫されているため、改札から短いコンコースをまっすぐ進むとすぐに正面に尾道水道の情景が飛び込んでくるように設計している。

 改札から海に向かって、駅コンコースの左側にはみどりの窓口と自動券売機、おにぎりスタンド・カフェ・ショップ・レンタサイクルのパントリー型店舗「おのまる商店」が並び、また右側にはロッカー、観光案内所、ホステル「m3 HOSTEL」、「喫茶NEO」へ続く階段、コンビニエンスストア「セブン-イレブン ハート・イン」が並ぶ。なお、同時にオープンする「食堂ミチ」はコンコースには面しておらず、セブン-イレブンの西側に隣接している。

 この店舗エリアのコンセプトは、「シンクロコミュニティ」。地域のモノを取り入れ、地域の人々とともに考えてアイテムやメニューを開発。過去を尊重し未来を創造していく、尾道の多様性を表現したモノ・コトを作り上げるという意味を一言で表わしたものだ。通勤、通学、旅の出発・到着点、地域の人々が行きかう尾道駅が、単なる通過点ではなく交流の場となることを目指している。

内覧時は自動改札機未設置。改札横の柵はTWILIGHT EXPRESS 瑞風のロゴマークをデザインした
尾道駅長 片岡茂樹氏が瑞風ロゴについて説明
改札から尾道水道側を望む
みどりの窓口と自動券売機
改札の脇にはロッカーが。数も多く旅行者にはありがたい
駅コンコースはコンパクトだが機能的にまとめられている
ロッカーエリアの中央にはベンチもあり、待ち合わせなどに便利
ロッカーの扉も「瑞風ゲート」と同じくグリーンに統一されている
ロッカーは現金またはICカードが利用できる
ロッカールームの隣に2階眺望デッキに上がる階段がある
階段部分には観光案内所も。パンフレットも違和感なく置ける秀逸なデザイン
眺望デッキへ上る階段にも仕掛けが……
階段の左右にずらりと並ぶのは、尾道で生まれた作品たち
作品にはQRコードが掲示されており、その作者や店へのアクセスが可能
気に入った作品にアクセスすることで、尾道の街の散策がより楽しくなるだろう
まだまだ多くの作品を展示できそうだ
階段を上がると「眺望デッキ」。目の前に尾道の駅前と尾道水道が
眺望デッキはベンチも完備。広く開放的な空間だ
エレベータは体の不自由な人のほか、自転車とともにホステルに宿泊する人も使用できる。ここにも瑞風グリーン

店舗

おのまる商店(1階:カフェ、おにぎりスタンド、ショップ、レンタサイクル)

おのまる商店

 コンコースに面したカウンターはおにぎりスタンド。尾道の山と海の幸がいっぱいに詰まった巻きおにぎりが手軽に買える。店内に入ると、ホットドッグなど手軽なローカルファーストフードが楽しめるカフェ、“Made in Onomichi”にこだわったお土産などが揃うショップがある。店内奥には尾道の街やしまなみ海道の島々をポタリングできるレンタサイクルも。尾道の街の魅力を凝縮したショップだ。

営業時間: カフェ、ショップ 7時30分~19時、レンタサイクル 9時~17時
客席数: 20席
レンタサイクル: 30台

おにぎりスタンドにはほかでは見ることのない変わった巻きおにぎりが並ぶ
カフェのカウンターと座席
メニューの一例
メニュー
ショップスペースには、尾道や近隣のお土産も揃う
尾道はしまなみ海道の出発点。駅でレンタサイクルが利用できるメリットは大きい

食堂ミチ(1階:大衆食堂、居酒屋、小料理屋)

食堂ミチ。少し分かりづらい場所にある隠れ家的な店

 実は食堂が少ない尾道。そんな尾道の駅に直結して、昼は飲酒もOKな定食屋として、夜は尾道が感じられる料理とともに一杯できる店として料理屋が誕生する。

 定番定食メニューのほか、尾道で昔から食べられていた郷土料理やそれらをアレンジした一品料理など、豊富な品ぞろえが自慢だ。オススメは「角煮」と、尾道の漁師飯だった浜子鍋をアレンジした海鮮の風味豊かな「浜子汁」。大崎上島の岩崎農園から仕入れる瀬戸内レモンをその場で絞る極上のチューハイとともにいただきたい。

営業時間: 平日 11時~14時/17時~22時、土日祝 11時~22時(水曜定休)
客席数: 19席

店内にはカウンター席、立席がある。立席にもコンセント完備なのがうれしい
昼に提供する定食
小鉢、大皿に盛られた料理も地元の食材が使われている
人気の瀬戸内レモンは生絞りで提供

セブン-イレブン ハート・イン(1階:コンビニエンスストア、お土産ショップ)

駅直結のセブン-イレブン ハート・イン

 コンビニエンスストア(セブン-イレブンとハート・イン)として、おにぎりやサンドイッチ、総菜、冷凍食品、飲料、日用品をそろえるほか、尾道の名産品などお土産も幅広く取りそろえる。セブン銀行ATM、マルチコピー機もあり、駅コンコースに直結しているため、尾道での散策やビジネスの起点として非常に便利だ。

営業時間: 5時30分~23時30分

コンコース側の入口とは別に、駅前広場側にも入口がある
お土産物コーナー

m3 HOSTEL(2階:ホステル)

m3 HOSTELのフロント

 尾道駅のなかという最高の立地に、快適な睡眠にこだわり、シンプルを突き詰めたミニマムなホステルが誕生する。コンパクトで高い天井という、縦長の空間を使った客室はインパクトも十分だ。

 客室は3タイプで、いずれも木材を多用し、ほぼ垂直のはしごで上下の空間をつないでいる。各階層はベッドとはしごスペースのみでテレビなどもなく、まるでアスレチックの遊具のなかで寝ているような不思議な感覚になる。

 シャワー、トイレ、洗面は男女別共用で、ホームや線路を見下ろせるラウンジにはミニキッチンもあり、またランドリーもある。フロントの奥にはバイクの保管スペースがあり、サイクリストにもありがたい。

ローカル駅のイメージでまとめ上げられたシンプルなフロント
フロントに併設のゆったりとしたブックラウンジ
客室レイアウト。計29室、最大66名が宿泊できる
コンパートメントルーム 定員4名、1室1万2000円~(税別)

3階層の空間で、1階は荷物などを整理するスペース、2階と3階にそれぞれベッドを2つずつ配置した最大4名のグループ向け客室。向かいあうベッドはそれぞれロールスクリーンで区切ることができる。各客室の入口にカーテンなどは設置されない。

定員4名の「コンパートメントルーム」は4室
シンプルなベッドスペースはアメニティもシンプル。ベッドサイドには鉄道を感じさせる小物入れも
バンクベッドルーム 定員2名、1室8000円~(税別)

2階層の空間で、1階と2階にそれぞれベッドを設置。収納は1階ベッド下を利用する。客室の入口はプライベートカーテンで仕切られる。リーズナブルな2名用半個室タイプという位置付け。

カーテンで区切られた定員2名の「バンクベッドルーム」は計11室
快適に寝ることに特化したベッドスペース。荷物スペースはベッド下に確保
プライベートルーム 定員2名、1室1万円~(税別)

3階層の空間で、1階はフリースペース、2階と3階にベッドを設置(一部、2階層で2階部分をダブルベッドとしたもタイプある)。ドアがあり施錠できる完全個室の客室。

定員2名の「プライベートルーム」は、施錠できる完全個室の客室
1階は多目的に使える。ベッドは2階、3階
海や駅前が一望できる部屋も

客室数: プライベートルーム 14室、バンクベッドルーム 11室、コンパートメントルーム 4室
Webサイト: m3 HOSTEL

シンプルで使い勝手のよいシャワールーム、脱衣所、トイレ、洗面台
廊下には、うがい、はみがきに利用できるシンプルな洗面も
サイクリストや長期宿泊者に歓迎されるランドリールーム
宿泊者が多目的に使えるラウンジ
壁のレンガは約130年前の初代駅舎建設時に基礎に使われたものだそう
ラウンジからは線路を走る列車が見渡せる
ラウンジには自動販売機、アイスディスペンサー、ミニキッチンも完備
自転車も預けられるので安心だ(ラックは最大7台分)

喫茶NEO(2階:喫茶レストラン)

喫茶NEOはモダンとレトロが調和する落ち着いた空間

 自由でレトロ……。そんな尾道の情緒を取り入れた落ち着いた空間で、本物志向の味が楽しめる喫茶店。モーニング(週末)、ランチタイム、ティータイム、ディナータイムと、時間によって提供する料理を少しずつ変化させる。例えば昼間はデザートが充実し、夜は小皿料理からしっかりとしたディナーメニューをラインアップ、また食事に会う洋酒も提供される。朝から夜までその時々の雰囲気に合わせた過ごし方ができるため、自宅以外の自分の居場所、もう1つの場所となるだろう。

営業時間: 平日 10時~13時、土日祝 8時~23時
客席数: 64席

座席は64席。純喫茶風のソファタイプの席や、カフェテラス風のウッドチェアの席もある
海に向かって座るカウンターテーブル、バーカウンター風の席もある
一人でもゆったり過ごせるカウンター席
夜にはおつまみとともに洋酒を楽しみたい
軽食メニューでありばがら本格志向の味が自慢だ
モーニング、ランチ、アフタヌーンティーなど、時間帯ごとに楽しめる

尾道駅長 片岡茂樹氏に聞く

 今回の尾道駅新駅舎の開業にあたり、JR西日本 岡山支社 尾道駅長の片岡茂樹氏に話を聞いた。

 片岡氏が尾道駅長となったのは約3年前で、当初から駅舎を建て替えるという使命を帯びて着任したという。開業を2日後に控え、片岡氏は「ようやくこの日が来ました。127歳を過ぎた駅舎が、ついに新たなステージに生まれ変わったんだなという想いでいっぱいです。

(尾道駅は)インバウンドの方を含めて、たくさんのお客さまがお越しになります。そういった方々に対して、これでやっとソフト面でもハード面でもしっかりとお迎えができる準備ができたのかなと思っております。今後は、尾道という場所を通じて、瀬戸内エリア全体が盛り上がるように、また盛り上げるきっかけになればと思っております」と述べた。

 また、尾道駅は訪れる旅行者のみならず、地元の人々にも活用してもらいたいと片岡氏は話す。「地元尾道を盛り上げていきたいなという方と一緒になって、私たちが先頭に立っていければと思っています」。最後に、新しい尾道駅の最大の見どころはなにかと尋ねた。片岡氏は「それはなんといっても、前の駅舎から引き継いだ、海が間近に感じられるこのロケーションでしょう」とにこやかだった。

西日本旅客鉄道株式会社 岡山支社 尾道駅長 片岡茂樹氏

 電車を降り、改札を出たらすぐに海という抜群の立地で生まれ変わる尾道駅。この海のこの近さは1階の改札階からでも分かるが、特に2階の眺望デッキで感じてほしい。きっと、これから始まる尾道の名所や食を巡る旅にワクワクするはずだ。