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新幹線試験車両「E956(ALFA-X)」の長い鼻の目的を、JR東日本・担当者が解説。先頭車両のデザインが2種類ある理由は?

2019年2月8日 公開

2019年5月 落成予定

JR東日本は、日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)において、5月の落成に向けて製作中の新幹線試験車両「E956」、愛称「ALFA-X(アルファエックス)」の10号車(新青森駅寄り)を報道公開し、現場ではALFA-Xの担当者が報道陣の質問に対応した

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は2月8日、日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)において、5月の落成に向けて製作中の新幹線試験車両「E956」、愛称「ALFA-X(アルファエックス)」の10号車(新青森駅寄り)を報道公開した(関連記事「JR東日本、新幹線試験車両『E956(ALFA-X)』10号車を公開。試験時の最高速度は約400km/hを予定」)。

 ALFA-Xは10両編成で、先頭車両には東京駅寄りの1号車と、新青森駅寄りの10号車で異なるエクステリアデザインを採用。川崎重工業が製作している1号車はE5系とほぼ同じ先頭長(約16m)、日立製作所が製作している10号車はE5系よりも長い先頭長(約22m)となっている。

 現場ではJR東日本研究開発センター 先端鉄道システム開発センター 所長の浅野浩二氏が報道陣からの質問に対応した。

報道公開したALFA-Xの10号車
東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センター 先端鉄道システム開発センター 所長 浅野浩二氏

――そもそもE956(ALFA-X)とは?

浅野氏:新幹線を開発するための試験のプラットフォームとしてALFA-Xは使われていきます。さまざまな開発の要素をこの車両に組み込んで、長い期間をかけていろいろな試験を行なっていきます。営業車ではなかなかできないような試験をこのALFA-Xで行なっていき、それを次世代の新幹線車両開発につなげていくという目的です。

 まず、次世代の新幹線車両開発に向けて、高速化を図ります。営業速度「360km/h」を目指していますので「速く走って、速く止まる」、それを安全に・安定して性能を確保できるようにすることがあります。そのため360km/hの1割増しの「約400km/h」が試験最高速度と考えています。

 さらに、長い距離をお客さまに乗っていただくにあたり、客室内でいかに快適に過ごしていただくか、サービスや快適性で付加価値を創造していく、試験を通じてそれらに取り組んでいきたいです。

「X」の文字があしらわれたALFA-Xの10号車

――両端の先頭車である1号車と10号車でデザインが異なるのは? 1号車を川崎重工業が、10号車を日立製作所が製作している理由は?

浅野氏:両先頭車両で我々が考えているコンセプトが違います。1号車は先頭長がE5系と同じぐらいの長さで、トンネルに突入する際の圧力波を抑制するとともに、客室空間を確保する、その両立を狙っています。

 10号車は従来よりも非常に長いロングノーズにして圧力波を抑えることに特化しています。シミュレーションを行ない長さを決めていきました。そしてさまざまなメーカーさまといろいろ調整して、総合的に判断して、2社さまに決めさせていただきました。

日立製作所が製作するALFA-Xの10号車
川崎重工業が製作するALFA-Xの1号車(写真提供:東日本旅客鉄道)

――北海道新幹線の札幌延伸を見据えての試験になると思うが、東京から札幌まで何時間で行けるのか? 航空機との差別化は?

浅野氏:営業速度360km/hの目標を掲げていますが、どの区間をどういう速度で走るかによって、到達時間は変わってくるので、まずは安定して360km/hで走れるかを2~3年かけて検証して、総合的に勘案して到達時間は決まってくると思います。

 航空機の場合は移動時間は短いですが、飛行機に乗るための、降りるための時間が細切れに存在しています。新幹線は東京駅で乗ってしまえば札幌までまとまった時間が取れますから、いかにお客さまにその時間を有効に使っていただくか、そこにフォーカスして、お客さまによい価値を提供できるかを磨いていきたいです。もちろんサービスの一つとして「早く目的地に着く」ということもあります。

動揺防止制御装置などを搭載し、より快適な車内空間を実現する

――10号車は非常にロングノーズだが?

浅野氏:トンネルに突入する際の圧力波をいかに抑えるかがコンセプトです。トンネルの断面積に対して、車両の断面積が小さければ小さいほど、トンネル内の空気に対して車両が押し込む空気の量が少なくて済みます。急激にポンとトンネル内の空気に圧力をかけると圧力波が強くなるので、先頭長を長くして断面積を小さいところから始めることで圧力波を抑制できます。

 しかし、そうすると客室スペースが狭くなるので(営業車のE5系に近い先頭長の1号車と、過去最長の先頭長の10号車を試験して)その折り合いをいかに付けるかがポイントです。そして試験の結果から営業車の先頭長を最終的に決めていくことになります。

先頭車の先頭長は1号車(東京駅寄り)が約16m、10号車(新青森駅寄り)が約22m。ちなみにE5系は約15m

――利用客へのメッセージを

浅野氏:JR東日本はさまざまな方面に新幹線ネットワークを構築しております。今後、札幌延伸に向けて新幹線が延びていきますが、お客さまにいかに快適に、利便性よく乗っていただけるかを目指して、開発を進めていきたいと思っています。

「お客さまにいかに快適に、利便性よく乗っていただけるかを目指して、開発を進めていきたい」と話す浅野氏