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神田明神、多用途イベントホール「EDOCCO(エドッコ)」12月15日開館。地下ではアイドルのライブも

2018年12月15日 開館

神田明神内に開業する多目的ホールを持つ「文化交流館『EDOCCO』」。手前は二之宮で商売繁盛の神えびす様像。ガラス張りのホワイエには、横20mにおよぶ西陣織アートが見える

 神田神社は、12月15日に「文化交流館『EDOCCO(エドッコ)』」を開業する。それに先立ち、報道陣に向けて内覧会を開催した。

 神田神社は、730年(天平2年)に創建され、約1300年の歴史を持つ。正式名称は神田神社だが、通称の「神田明神」の方がなじみがよいだろう。東京・神田に位置し、神田、秋葉原、日本橋、大手町、丸の内といった都心の氏神様として、都心を中心に多くの人に親しまれている。

 御祭神は、一之宮として「だいこく様(国土開発、医薬健康、夫婦和合、縁むすび)」の「大己貴命(おおなむちのみこと)」、二之宮が「えびす様(商売繁盛、開運招福、医薬健康)」の「少彦名命(すくなひこなのみこと)」、三之宮は「まさかど様(除災厄除、勝負事)」で「平将門命(たいらのまさかどのみこと)」となっている。

 江戸幕府からは「江戸総鎮守」の称号を拝し、1934年(昭和9年)に建てられた御社殿は、2003年に国の登録文化財に認定されている。2年に1度、5月には「神田祭」が盛大に開催されていて、2019年は新元号元年として開催予定だ。

国の登録文化財でもある神田明神の御社殿。文化交流館「EDOCCO」この左側に位置する

 このEDOCCOの開業は、2029年に「創建千三百年奉祝の年」を迎えるにあたっての記念事業の一環。コンセプトは「伝統と革新」。参拝者、国内外からの観光客に日本の伝統文化を伝える施設としても機能する。2~3階部分の多目的に使える「神田明神ホール」を中心に、1階には神札授与所や物販、飲食のスペースもあり、地下1階には日本文化を体験できるスペースの「EDOCCO STUDIO」がある。開かれた気軽に訪れることができる施設になっている。

 また、館内には画家・松井守男氏、金工作家・宮田亮平氏、着物デザイナー・斉藤上太郎氏らが手掛けたアートが各所に奉納されていて、これも見どころとなっている。

 文化交流館「EDOCCO」のネーミングは、英語の「EDO Culture COmplex(江戸文化交流)」を略して、かつ「江戸っ子」とかけている。

境内全景。左が正門、中央にEDOCCO、右が御社殿という位置関係になる
御茶ノ水駅方面から正門に向かうと、右手に現代的な建築のEDOCCOが見えてくる
正門側から見たEDOCCO
正門を境内側から見た背面
文化交流館「EDOCCO」を境内から見た正面。全面ガラスのファサードを持つ近代的な建築物
御社殿側から見たところ。手前にあるオブジェには、おみくじが結ばれている
正門側から見たところ。神社の建築と合わせてみると新旧のコントラストとなる
エントランス周辺。1階右に神札授与所
神札授与所は、なかに入らないでもアクセスできる作り
ちょっとした休憩スペースも設けられていた
道路側の角に奉納されたアート。「二之宮・少彦名命『えびす様』(宮田亮平氏作)」に壁面は「blue・blue・ブルー(松井守男氏作)」のコラボレーション

 2~3階を占める建物の主要部となる「神田明神ホール」は、着席で400名、スタンディングで700名の収容が可能な多目的ホール。仕切りを解放することで、ホワイエ~デッキにいたるまでを完全に一体となって利用することもできる。

 デッキからは境内と都内の景色を一望でき、開放感は抜群。平日は公開シンポジウムやセミナーなど主に企業などに向けた活用を、土日にはコンサートや講演などで一般向けの利用を考えているとのこと。直近ではクリスマスイブの12月24日に「DAIGO」のソロライブが開催される。今後ライブなどで訪れる機会も増えそうだ。

建物のメインとなる「神田明神ホール」
スタンディングで700名収容。多目的に活用できる
3階から見下ろしたところ
ホールとホワイエ間を解放したところ
ホール壁面の造作
ホワイエ側から。ホールとホワイエ間を閉じている
ホワイエ上部に飾られる西陣織のアート「神田大明神祭札絵図(斉藤上太郎氏作)」
3階から「神田大明神祭札絵図(斉藤上太郎氏作)」とホワイエを見る
ホワイエ天井から大胆に垂らすように飾られるアート「昇り龍(松井守男氏作)」
ホワイエに奉納された迫力あるアート2作品
2階ホワイエとデッキも解放することができる
ホワイエとデッキを解放するとホールまで外に連続的に続く。境内と一体感があり開放感がすごい
デッキとホワイエの窓を閉めたところ
2階デッキから境内を見下ろす
2階デッキには外階段があり、ホールに直接入るエントランスもある
貴賓室として4階に用意された「EDOCCO LOUNGE」。窓のスクリーンには、鎮守の杜をモチーフにしたアート「光の森(松井守男氏作)」が奉納されている
スクリーンを開けると庭園が見える。解放することも可能
床の間もあるステージが用意されている
天井には金箔で鳳凰が描かれている。隣の「鳳凰殿」からたどり着いたイメージ
壁にも松井守男氏作のアートがあしらわれている
4階の庭園。名称は新元号発表後に、ちなんだ名前を付ける予定とのこと
EDOCCO LOUNGEの入口
3階ホワイエ横にある「VIPラウンジ」。ホワイエ上部にあり、境内も一望できる

 地下1階には「EDOCCO STUDIO」というスペースがあり、日本文化の体験や、夜には新しい文化のエンタテイメントパフォーマンス(秋葉原文化からアイドルパフォーマンスなども予定されている)などの、多様なプログラムを気軽に楽しむことができる。

 併設の「j-culture 着物屋」では、着物のレンタルや販売があり、着付けの体験ができる。

地下1階の「EDOCCO STUDIO」
併設の「j-culture 着物屋」
着物のレンタルや販売がある
豊富なレンタル着物着付け体験が可能
ステージではショーも行なわれる。東京都無形文化財指定の江戸糸あやつり人形「結城座」の講演
日本文化に親しむプログラムが用意される。三味線の演奏
着物を着て琴を演奏する
地下には、EDOCCO~御社殿~神明会館をつなぐ80mの地下道がある

 1階には、神札授与所と物販の「EDOCCO SHOP -IKI IKI-」、飲食スペースの「EDOCCO CAFE -MASU MASU-」(年中無休、11時~18時)があり、気軽に休憩やお土産購入が楽しめる。飲食スペースは、夜18時以降に「おでんと日本酒の店 枡々(マスマス)」に変わる(18時~22時、日曜・祝日はお休みなので注意)。関東炊きおでんだけではなく、鍋や焼き物、揚げ物も用意されている。

 食べ物や飲物、オリジナルのグッズは神田明神で祈祷されている。ここでしか手に入らないアイテムも多いので、ぜひ覗いてみよう。

1階エントランスから物販と飲食スペースを見たところ
1階エントランスの階段へと続くスペース。1876年(明治9年)歌川芳藤氏作の陶板アート
エントランス横の神札授与所
お神札やお守り、授与品に数々。アニメキャラクターデザインの絵馬もある
交通系ICカードの支払いに対応。右はめずらしいIT情報系安全祈願
お土産物などを購入できる「EDOCCO SHOP -IKI IKI-」。神社を意識した木材を多用した作り
EDOCCO SHOP -IKI IKI-
神棚や神具
オリジナル「明紙クッキー」3種パックで1200円
オリジナル「森のコーヒー」ドリップ5パック入りで650円
東村山市豊島屋酒造「金婚」上撰ミニ樽
来年の干支にちなんだグッズなど
最近はめずらしくなってしまったコマも販売
オリジナルTシャツは各種ある「因幡の白兎」キッズ向け1800円
神道に関連した書籍も扱っている
「EDOCCO CAFE -MASU MASU-」
「EDOCCO CAFE -MASU MASU-」の奥にある飲食スペース
「EDOCCO CAFE -MASU MASU-」の「益々繁盛御前(2000円)」。4つの枡を使い、2つの枡で「益々」、半升枡で「繁盛」を願う。料理は季節によって変わる。白米と寝かせ玄米はチョイス可
左は「明神プリン(380円)」で抹茶もある。右は「神社声援(ジンジャーエール 280円)」で、すりおろし生姜使用
「お抹茶セット(800円)」季節の生菓子付き
「枡パフェ(750円)」オリジナルのマスカルポーネを使用。なかは抹茶アイス。ぶぶあられや白玉、甘納豆なども
夜は居酒屋になり、関東炊きおでんを中心にしたメニューが楽しめる

 内覧会の前には式典が行なわれ、冒頭に登壇した神田明神 宮司 大鳥居信史氏は、「神田神社は1300年ほど前に創建された、東京でも古いお社の1つです。今回文化交流館が建てられた理由ですが、日本には素晴らしい伝統文化、芸能、芸術がたくさんあるのですが、発信する場が少ない。特に神社では少ないのです。そういう理由からこのような施設を建てました。

 10年後には創建1300年を迎えます。それまでに開催されるオリンピック・パラリンピックの折には、世界各地から来日されます。最近では参拝客の半数は国外からという様相になっています。今回の文化交流館『EDOCCO』開館は、創建1300年記念事業の第1弾です。日本の伝統文化、芸能、芸術を、この文化交流館を通じて世界の皆さまに紹介していきたい。神社としても、伝統文化、芸能、芸術を発信する基地として、成長していきたいと思います」とあいさつした。

 続けて、神田明神 権宮司 清水祥彦氏から、神田明神の歴史や成り立ちをはじめとする解説があった。神田明神の御祭神は記事の冒頭で書いたとおりだが、江戸城に対して鬼門に当たる位置にあり、鬼門封じの役があることや、盛大に行なわれる神田祭の紹介、また神田は芸術の上野、学術の本郷、ポップカルチャーの秋葉原、出版の神保町と、文化資源の中心にあることなどを説明した。そして、神社は不変なのではなく、伝統を守りながら常に柔軟な創造性で新しく変化していくこと。現状の神社は、25年後には4割が消滅するという予測もある危機であり、社会状況の変化に対応していく必要性も説いていた。その一端が、文化交流館「EDOCCO」開館に込められている。

 続けてEDOCCOの解説が、神田明神文化交流館統括プロデューサーの乃村工藝社 プロデューサー 坂爪研一氏、鹿島建設 建設設計本部チーフアーキテクト 丸山琢氏、乃村工藝社 クリエイティブ本部 大西亮氏、着物デザイナー 斉藤上太郎氏、画家 松井守男氏らからあり、途中には雅楽の演奏に合わせ、巫女の舞も行なわれた。

神田明神 宮司 大鳥居信史氏
神田明神 権宮司 清水祥彦氏
神田明神文化交流館統括プロデューサー 株式会社乃村工藝社 プロデューサー 坂爪研一氏
鹿島建設株式会社 建設設計本部チーフアーキテクト 丸山琢氏
株式会社乃村工藝社 クリエイティブ本部デザイナー 大西亮氏
着物デザイナー 斉藤上太郎氏。20mある西陣織アート「神田大明神祭札絵図」の前で解説
画家 松井守男氏
ステージ上で松井守男氏の1985年の代表作「遺言」を披露
雅楽の演奏に合わせ、巫女の舞
2名の巫女がおごそかに舞う
雅楽の演奏。管楽器の演奏者
雅楽の演奏。打物の演奏者
神田明神は、電脳街秋葉原からは徒歩圏内。アニメとのコラボにも積極的で、「ラブライブ!」シリーズをはじめとした多くのアニメファンが参拝に来る。今回、「伝統と革新」を掲げる新しい神社にふさわしい施設ができた。「EDOCCO」は誰でも楽しむことができる施設。ぜひ参拝がてら訪れてみてほしい