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ANA、第73回定時株主総会。エアバス A380型機やハワイ戦略を強調

A380就航日などは2018年秋に発表

2018年6月28日 開催

ANAホールディングス株式会社は第73回定時株主総会を6月28日に開催

 ANAHD(ANAホールディングス)は6月28日、第73回定時株主総会を開催した。2018年3月31日時点での総株主数は47万5978名、議決権を有する株主数45万1271名、議決権数は333万8558個。議決権行使書を郵送した人、インターネットなどで議決権を行使した人を含め、議決権行使者は14万7299名、議決権行使数は213万5542個となった。

 総会の議長を務めたANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏は総会開始にあたり、前日の6月27日夜に発生した、羽田発~鹿児島行きのANA629便で機内気圧の低下が表示されたため関空(関西国際空港)に緊急着陸した事象に言及。発生原因は現在究明中であるとするとともに、搭乗客や関係者、株主に謝罪の言葉を述べた。

 総会ではまず、過去最高益を記録した2018年3月期(2017年度)のグループ事業概況(関連記事「ANA、2017年度(2018年3月期)連結決算は3期連続過去最高を更新する増収増益」)や、2018~2022年度中期経営戦略(関連記事「ANAグループ、2020年度を目処にLCCの中距離国際線開設、2018~2022年度中期経営戦略発表」)を紹介。

 このうち、2018年度の事業の見通しについて、国内線では日本経済の好循環拡大と訪日外国人旅客の国内移動などで需要は堅調に推移すると見込み、保有機材を活かした需給適合による収益性確保に努めるとした。国際線では、好調なビジネス需要と旺盛な訪日需要の取り込みに注力し、さらなる収益性向上を図る。

 機材は、2018年度にエアバス A380型機×1機、ボーイング 787-10型機×1機、エアバス A321neo型機×9機、ピーチ向けエアバス A320型機×4機など、計25機を導入。一方、ボーイング 777-200型機×3機、ボーイング 767-300型機×6機など計20機を退役する計画。

 エアバス A380型機については、ANA代表取締役社長 平子裕志氏からもハワイ戦略について説明があり、ハワイの空を表現したANAブルーの機体と、海を表現したエメラルドグリーンの機体を2019年春に導入。2020年度にハワイの夕陽を表現したサンセットオレンジの機体を導入する。

 ハワイについて平子氏は、「2017年度は150万人、1日あたり約4000名が渡航している市場。リーマンショックなどの影響も受けず需要が安定的に推移しており、10年前と比べて30%以上増加。日本人にとって根強い人気のリゾート地」とし、現在、東京~ホノルル間では、246席仕様のボーイング 787-9型機を1日3便、738席を供給しているが「搭乗率は90%以上で、座席数が足りない状況が続いている」と話し、2020年度に3機のエアバス A380型機を投入したあとは最大で1日1560席と2倍以上の提供座席数となり、「特典航空券での利用も容易になる」と説明した。

 今後、2018年秋に就航開始日や運航ダイヤ、販売開始時期などを発表するという。また、2018年度はANA、ANAセールスともに販売を促進。ANAセールスはA380型機導入のプロモーションや商品ラインアップ拡充で、ハワイ方面を重点的に販売強化する。

 質疑応答では、事前に株主から寄せられたパイロット不足問題に対しての質問のほか、エアバス A380型機やハワイ戦略に関するもの、安全対策、LCC事業などについて質問が挙がった。主な質疑応答を記載する。

 パイロット不足の懸念に対しては、その対策に向けた取り組みなどを回答。30代、40代、50代で各30%ほどで、自社養成が約50%、航空大学校が約40%、自衛隊や私立大学の養成コースが約10%の出身者となっている。航空大学校からの採用定員を約1.5倍に拡大したほか、航空大学校や私立大学養成コースを目指す志望者への奨学金制度の拡充など、基礎訓練過程を終えていることで訓練費用を効率化できることから一定規模を安定的に採用。また、民間活用制度、ピーチ(Peach Aviation)での自社養成のほか、AIR DO、ソラシドエアとの共同養成も検討。副操縦士に特化したライセンスであるMPLによる訓練期間と費用の効率化など、訓練費用を抑えるさまざまな取り組みを行なっており、これらを継続することでANAグループとしては大きな課題はなく確保していける見込みであるとした。

 ハワイ戦略やエアバス A380型機についての質問では、エアバス A380型機の整備体制について質問が挙がり、運航時の整備であるライン整備を除いては外部委託を考えているとし、候補としては同型機を運航するシンガポール航空、アシアナ航空、ルフトハンザ ドイツ航空が有力であるとしたが、そのほかの整備会社なども公平に評価し、検討していくと回答した。

 また、競合となるJALとジャルパックがハワイで提供している「JALOALOカード」のようなソフト面でのサービスについては、「A380就航に向けていろいろな作戦を考えている」と回答。ショッピングセンター内のラウンジ、ループバスの活用など「A380就航という契機に向けてアイディアを考えたい。楽しみにしていただきたい」とした。

 MRJの納入遅延に対するリスク管理に関する質問に対しては、2017年1月に2020年半ばの納入へと5回目の遅延が発表されたが、2018年5月に改めて2020年半ばの納入と表明されたことや、7月の英ファンボロー航空ショーでANAカラーのMRJが飛行展示を行なう予定であるなど、完成度の高い機体の納入に期待。これまでの遅延に対してはボーイング 737-500型機の退役延期やボンバルディア Q400型機の追加発注、ボーイング 737-800型機の追加リースで対応し、事業計画への影響を極小化しているとの認識を示し、開発状況を注視して事業計画に影響を及ぼさないよう適切に対応していくとした。

 安全対策については、2020年に向けての羽田空港発着枠拡大にあたり、東京都心上空を飛行経路とすることに対する不安の声が挙がった。落下物に対しては国や関係機関との検討のほか、グループ内でも整備部門を中心に対策を行なっているほか、パイロットや地上スタッフも含めて「普段となにか違わないか目を光らせている」と説明。また、ボーイング 787型機やエアバス A321neo/A320neo型機、ボーイング 777-9X型機などの導入で航空機自体の騒音を減らすことや、空港の離着陸方法や航路選択でより騒音を減らせるようグループで取り組んでいくと答えた。

 サービス面では同日に福岡空港にも導入されたANA Baggage Dropの引換証が出るタイミングなどに指摘があった。「利用者が増えており、意見をいただいてシャッターが閉まるスピードや引換証が出るタイミングなどで声があり見直した」と事例を挙げ、今後も利用者の声に応えて改善に取り組む姿勢を示した。また、ANAマイレージクラブでプラチナ以上のステータスを取得すると入会できる「SFC(スーパーフライヤーズカード)」の今後のサービス継続についても質問が挙がり、会員は「それまでに相当の弊社便があった大切なお客さま」とし、「引き続き継続していきたい。改悪などするつもりはないのでご安心いただきたい」と答えた。

 LCC事業については、いわゆるLCCターミナルの利便性について質問が挙がり、質問した株主は特に那覇空港のLCCターミナルが不便であるとし、「これで『アジアのリーディングLCC』を目指せるのか」と指摘。この質問に対しては、総会に出席したバニラエア、ピーチの各代表取締役が回答した。

 バニラエア 代表取締役社長の五島勝也氏は、「成田空港でも第3ターミナルを使用している。安い運賃を提供するために、施設使用料が安いターミナルを使用している。ほかのターミナルに比べて鉄道駅から歩くかバスに乗ることになる。常日頃から空港会社にもターミナルへのアクセス改善はお願いしており、連絡バスの増設や短いルートの開設などを行なった」としたほか、那覇空港については「来年早々には国内線、国際線ターミナルを連結する工事が完成し、その暁には移転するので利便性が高まる」と理解を求めた。

 ピーチ(Peach Aviation) 代表取締役CEO 井上慎一氏は「関空では第2ターミナルを使用しており、第1ターミナルではコストが高く“エブリディ・ロープライス”の期待に答えられないため。那覇空港は少し状況が異なり、就航時にメインターミナルが満杯で、物理的に飛ばせなかったが、多くのお客さまから飛ばしてほしいとの要望を受け、ANAHDとも相談して暫定対応として貨物ターミナルを借用している。(五島氏も触れたとおり)来年には新しいターミナルができて、そちらに移る」として、那覇空港については、不便を承知のうえでの暫定対応であると説明。

 また、このようなLCCターミナルで「アジアのリーディングLCC」を目指せるのかとの指摘に対しては、「(LCCターミナルを利用することで)低運賃を担保できる。就航から5周年を迎えたときの調査で1番多く乗ったお客さまは368回で、札幌、鹿児島から大阪に単身赴任しているお父さんだった。台湾の女性が沖縄の美容院を訪れるために使っている。低運賃によって巻き起こす新しいムーブメント注目いただきたい。バニラエアと一緒になったあとには、このムーブメントをアジア全域に広げ、新しい需要を創出することで既存LCCと競争し、勝っていきたい」と答えた。

 最後にANAHDから上程された3つの議案について採決を採り、期末配当は1株あたり60円、総額200億9267万6040円とする第1号議案、取締役10名の選任(いずれも再任)に関する第2号議案、監査役1名の選任(いずれも再任)に関する第3号議案のいずれも可決された。

 なお、第1号議案については、質疑応答のなかで配当性向(純利益に対する配当金支払い額の割合)が低い(14%)との指摘があったが、2018年3月期決算の純利益にはピーチの連結化や土地売却などの利益が含まれ、それを除くと前年並みに近いことから当初計画どおりの配当であることを説明。2018年度については70円へ増配を予定するほか、投資家向けには配当性向を30%へ引き上げていくことを表明するなど、「成長への投資、財務体質強化と併せ、株主還元の配当性向の引き上げを含めて経営の重要課題として取り組んでいく」と理解を求めた。