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キプロス共和国・パフォスで欧州文化首都「Pafos2017」オープニングセレモニー開催

1年間にわたって350以上のイベント実施、6月には日本の和太鼓演奏イベントも

2017年1月28日(現地時間) 実施

欧州文化首都「Pafos2017」オープニングセレモニーがキプロスのパフォスで開かれた

 2017年の欧州文化首都に選定されているキプロス共和国のパフォスで1月28日(現地時間)、欧州文化首都「Pafos2017」オープニングセレモニーが開催された。キプロス政府観光局(協力/後援:日本旅行業協会、カタール航空)が実施したプレスツアーに参加し、同イベントを取材した。

 欧州文化首都とは、EU(欧州連合)が加盟国の文化の相互理解を深めることを目的に毎年2都市を選定しているもの。指定都市では、芸術や文化を伝えるようなイベントなどを1年間にわたって実施する。2017年はキプロスのパフォスとともに、デンマークのオーフスが選ばれている。

 キプロスは金融、海運に並んで観光業も盛んで、直接的な旅行関連業と、間接的な産業を合わせて主要な産業の一つ。首都のニコシアや、空港のあるラルナカ、港湾都市として栄えたリマソール、そしてローマ時代までの首都である2017年の欧州文化首都に指定されたパフォスなどが主要都市で、観光地としても栄えている。

 同国への観光客数は、キプロス共和国政府が発表している2016年の数字で約319万人。日本からは784人が訪問している。ハイシーズンは夏期で、地中海のリゾート地として多くの人が訪れるという。

 キプロス政府観光局の担当者によると、2016年の約319万人という数字は前年比約20%増という伸びで、過去25年間でも最もよい数字であるものの、夏期は満室になるホテルが多く、ここから大きく数字を伸ばすにはホテルの整備や冬期の訪問客獲得が課題。また、日本市場も重視しているといい、2016年にはツーリズムEXPOジャパンにも出展するなどプロモーションを強化して、まずはキプロス共和国の認知度向上を図る考えだ。

 そんなキプロスの南西部に位置するパフォスは、ギリシャ神話において愛と美の女神として登場するアフロディーテ誕生の地とされている「ペトラ・トゥ・ロミウ」があることで知られる。このパフォスという地名も、キプロス島の王であるピグマリオンと、そのピグマリオンが彫刻し、そして恋をし、アフロディーテによって命を吹き込まれて結ばれたガラテイラとの間に生まれた子である“パポス”の名にちなんでいるという。

 また、アフロディーテ信仰の街として古代より栄えたとされ、新石器時代の遺跡も発掘されているほか、ローマ時代の貴族の邸宅や、モザイク芸術など、ローマ帝国からヘレニズム時代、東ローマ帝国の遺跡も多く残る。こうした遺跡の数々が状態よく保存されていることから、「パフォス」として街全体がユネスコの世界文化遺産に登録されている、同国の主要観光地の一つとなっている。

パフォスの海岸に建つ中世の「要塞跡(Medieval Fort of Pafos)」。「パフォス城」とも呼ばれる
世界遺産に登録されている「王族の墓(Tombs of the Kings)」
「モザイク遺跡(Kato Pafos Archaeological Park)」内の「テセウスの家(House of Theseus)」にあるテセウスとミノタウロスのモザイク
同じくモザイク遺跡にある「ディオニュソスの家(House of Dionysos)」。床にさまざまなモザイクが残る
Pafos2017 チェアマンのクリストス・パトサリデス(Christos Patsalides)氏

 欧州文化首都「Pafos2017」開幕日となる1月28日に記者会見を行なったPafos2017のチェアマンを務めるクリストス・パトサリデス(Christos Patsalides)氏は、「欧州文化首都は、イメージ、ブランディングの価値を高めるよいチャンスだ。そして重要なのは、インフラの整備や、将来にわたって文化を開発していくきっかけになること」と意義を説明。「すべての経験は人々の情熱によって成り立っている。それは、パフォスにある文化、遺跡、芸術などの新たなブランディングの方向性を示している」とし、「2017年は、パフォスの新しい時代の幕開けとなる」と述べた。

 同氏は、Pafos2017のイベントも紹介。152のプロジェクト、350を超えるイベントを実施。1月28日を皮切りに、音楽、映画、演劇、ダンス、写真、アニメ、建築、環境、ガストロノミー(食)などさまざまな文化を網羅するイベントを計画する。文化はどこでも創り出せることを示す「オープン・エア・ファクトリー」をコンセプトに、多くのイベントを屋外で実施するという。また、ほとんどのイベントは無料で参加でき、大きなイベントの一部のみ有料。チケットは公式サイトで案内しており、おおむね10~30ユーロ(約1250~3750円、1ユーロ=約125円換算)となっている。

 イベント内容はキプロスの文化紹介に留まらず、「大陸をつなぎ、文化をつなぐ」をモットーに異国文化との相互理解を深めるようなイベントが予定されている。なかには日本の和太鼓演奏(6月30日を予定)もあり、、キプロス外を含む世界中から1500名以上のアーティストやクリエイターがパフォスで文化を紹介する。さらに、先述のアフロディーテの誕生の地「ペトラ・トゥ・ロミウ」での音楽イベントもある。ペトラ・トゥ・ロミウでこうしたイベントが実施されるのは初めてのことだという。

パフォス市内にインフォメーションデスクとしてブースを設け、パンフレットなどを配布。彼らはボランティアスタッフだという
配布されているパンフレットやノベルティ
市内の道路でも「Pafos2017」の開催をPR
このようなタペストリーを用いてイベントの告知などが行なわれていた
市内中心部のケネディ・スクエアでも1月28日夜からイベントが行なわれていた
「要塞跡」の内部では、キプロス出身の映画監督であるマイケル・カコヤニス氏の映画のシーンをパネル展示

 同日夜にパフォス市内のタウン・ホール・スクエアで開かれたオープニングセレモニーでは、クリストス・パトサリデス氏のほか、パフォス市長(Paphos Mayor)のフェドナス・フェドノス(Fedonas Fedonos)氏、EUの欧州委員会で人道援助・危機管理を担当するキプロス出身のクリストス・スティリアニデス(Christos Stylianides)氏、キプロス教育大臣(Education Minister)のコスタス・カディス(Costas Kadis)氏がギリシャ語で挨拶。

欧州文化首都の記念パネル贈呈
Pafos2017 チェアマンのクリストス・パトサリデス氏
パフォス市長のフェドナス・フェドノス(Fedonas Fedonos)氏
EU 欧州委員会のクリストス・スティリアニデス(Christos Stylianides)氏
キプロス教育大臣のコスタス・カディス(Costas Kadis)氏

 その後、パフォスの名前の由来となっているピグマリオンとガラテイラとパポス誕生の物語をモチーフに、世界中のトラベラーにとっての重要地点であったキプロスや、若い世代が作り出す未来のイメージを盛り込んだステージイベントを披露した。

 ステージイベントには、バレエダンサーによるパフォーマンスや、ランタンを持った多くの子供たちのパレード、領土問題はあるものの歴史的には同じキプロスの土地で過ごしてきた民族の融和を象徴したギリシア語とトルコ語による歌、もう一つの欧州文化都市であるデンマークのオーフスからの合唱団らが参加。スクエアに詰めかけた多くの聴衆がパフォーマンスに見入っている様子だった。